「トイレを街のオアシスに変える」-トイレ空間づくりの女性先駆者が講演

小林さんの事務所で、自身が手がけた秋葉原の有料トイレ
の模型と共に

小林さんの事務所で、自身が手がけた秋葉原の有料トイレ の模型と共に

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 大阪府立女性総合センター(愛称=ドーンセンター、大阪市中央区大手前1、TEL 06-6910-8616)で3月15日、講演会「女性と仕事~空間デザイン編『トイレを街のオアシスに変える~一級建築士・小林純子の仕事』」が開催された。参加者は20~60代の女性21人。

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 小林さんは、設計事務所ゴンドラ(東京都文京区)代表として、トイレを中心とした設計や講演活動、ワークショップに取り込む一級建築士。「既成概念にとらわれないデザイン」「持続する快適さの創造」をテーマに、駅や商業施設、公共トイレなどの設計に携わり、日本トイレ協会理事も務める。

 小林さんは「夫の転勤で、大学卒業後に7~8年勤めた設計事務所を辞めざるを得なかった。一級建築士は足の裏の米粒。取っても食えないから」と会場の笑いを誘いながら、「(仕事を)一度手放したが、人と絡んで作っていく面白さが忘れられず、転勤先の北海道で再び勤め始めた。棟りょう中心の男社会で(仕事を)試されながら、ひるまず誠実にコミュニケーションをとっていった」と振り返る。

 「トイレの仕事は、バブル期の1988年に参加した香川県・瀬戸大橋の大型公衆トイレの設計に参加したのが最初。男性設計者の下に女性スタッフ5人が集められた。女性トイレには男性は入れないし、『体の一部を露出するので、安心したいし、化粧もしたい』という女性消費者を主体としないと成り立たないからと、珍しく女性設計者が求められた。以来、『また便所』とスタッフに言われるくらい、トイレの仕事が9割」と小林さんは笑いながら、駅や商業施設、山の中などに作ったトイレの事例や、ワークショップの模様などを、スライドを使いながら説明していく。

 「トイレは、作る場所によって求められるものが違う。もう一つの原点となった東村山のトイレでは、トイレは設計者だけでは作れない。管理者やメンテナンス従事者など、地域の人たちとも連携しないと、安全は作れないと痛感した」と反省も交えて話す小林さんに対して、活発な質問も寄せられ、講座は予定の2時間をオーバーして閉会した。

 講座を終えて、小林さんは「毎回身をよじるようにしてアイディアを出している。トイレは要素が少ないから出尽くした感もあるが、そんな時は原点に返って考えると見えてくる。大阪と比べて東京の駅のトイレは小ぎれいになった。駅ナカのデパート化で滞在時間が増えているからかも。京橋は場所によって印象が全然違うが、ああいうごちゃごちゃした街も嫌いじゃない。京阪モール4階のトイレは、『この街の人も快適な“行きつけ”のトイレを欲しいだろうな』と思って、普通のOLさんが立ち寄りたいと思えるように設計した」と話す。「今後も街づくりの中でトイレをとらえ、居心地の良い街をつくるために、その場に即したものを整備する動きの手伝いをしたい」とも。

 次回は3月19日、関西演劇界で活躍する女性劇作家2人を招き、「私はこれで生きる~劇作家の履歴書」をテーマに行う。開催時間は19時~20時30分。参加希望者は、同センターまで事前の申し込みが必要。受講無料。

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