関西が拠点の女性劇作家2人が講演-演劇に懸ける思い明かす

コーディネーターの質問に答える棚瀬美幸さん(左)と樋口ミユさん(右)。

コーディネーターの質問に答える棚瀬美幸さん(左)と樋口ミユさん(右)。

  • 0

  •  

 大阪府立女性総合センター(愛称=ドーンセンター、大阪市中央区大手前1、TEL 06-6910-8616)で3月19日、関西演劇界で活躍する女性劇作家2人による講演会「私はこれで生きる~劇作家の履歴書」が開催された。

[広告]

 劇作家の1人、棚瀬美幸さん(33)は大阪芸術大学時代に結成した劇団南船北馬一団で、劇作家兼演出家を務め、文化庁新進芸術家海外留学制度による1年間のドイツ・ベルリンに演劇留学経験がある。2001年に第7回日本劇作家協会新人戯曲賞大賞、2006年に大阪舞台芸術新人賞などの多数の受賞経験を持ち、ラジオドラマでも精力的に作品を発表している。

 樋口ミユさん(33)は大阪信愛女学院高校演劇部出身で、劇団Ugly ducklingの脚本家兼女優。OMS戯曲賞大賞を女性初、最年少で2年連続受賞し、関西若手劇作家として頭角を現す。現在はラジオドラマや雑誌など執筆や俳優として多方面で活躍している。

 講座は、毎日新聞の畑律江さんがコーディネーターとなり、演劇の世界に入ったきっかけから、現在の生活、メディアではなく演劇に懸ける思い、今後の活動についてなどの質問に答える形で進み、2人の赤裸々な回答に参加者は真剣に耳を傾けた。講座の終わりには、表現に携わる受講者らの質問が、予定時刻を過ぎても続いた。

 樋口さんは「大学を卒業後、演劇をやっていると伝え、土曜・日曜は出勤できないと言って小さな会社に就職して演劇を続けた。入社して初めての公演を迎え、これでは台本が書けないと半年で辞めた。でも今思うと、そんなにしんどくなかった。20代のころの方が怠けていた。今は自分たちで昼はカフェを、夜はそこをけいこ場にして、週末はそこで舞台公演をしているが、今ならモーニングから働いて夜帰ってからでも台本は書ける」と淡々と話す。

 棚瀬さんは「ドイツへ留学して、『帰ってきたくない。ずっとドイツで演劇をしたい』と思うほど、演劇を取り巻く環境が日本と全く違うことに驚いた。観客はいるし、助成はあるし、図書館で本を借りるみたいに、税金で演劇を安く見ることができる。演劇の情報も多いし、演劇人の地位や知名度も違う。日本で作家が発言するように、劇作家が国会で発言したりする。社会の反応も違い、日本では演劇をやっていると言いうと、皆が口をそろえて『大変ねー!』と言うが(笑)、ドイツではこうしたリアクションがなく、普通に『何をやっているの?役者?スタッフ?』と聞いてくれる」と話す。「テレビなどメディアで書きたいなら東京にと言われるが、大阪を捨てるのは演劇を捨てるのも同じ」と大阪への思いも強い。

 講座を終えて樋口さんは「実は、環状線と京阪の京橋駅の間の広場、時計台の前で、立ち止ったのが劇団設立のきっかけでもある。このまま人の流れに乗っていくのをやめた」と話し、「何かを見た時に文字にしたいと思う。例えば虹を見つけて物語が浮かぶ。演劇をやることで、何かしらのアンテナが張り巡らされていて、それを今はオフにできない。留めておきたいと思う。1日1行書かないとダメだという刷り込みもあるけれど」と笑う。

 次回は3月28日、「女性のためのヘルスケア~毎日健康美人! ~生理痛を知って快適ライフ」をテーマに行う。開催時間は15時~16時30分。参加希望者は、同センターまで事前の申し込みが必要。受講無料。

京橋経済新聞VOTE

あなたのお住まいはどちらですか?

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース