「テント芝居」で全国を旅して回る劇団「どくんご」が10月1日~3日、大阪城公園「太陽の広場」で公演を行った。「どくんご」の大阪公演は2001年(中之島・剣先公園)、2005年(扇町公園)に続いて3回目。
大阪城公園「太陽の広場」に突如現れた謎の小屋。それは一見、屋台の小料理店にも見える。足を踏み入れると、4メートル四方の小さな舞台を客席から見下ろすこぢんまりとした芝居小屋。劇団「どくんご」はこの組み立て式のテント芝居小屋を2台の2トントラックで移動させながら、北海道から鹿児島まで全国を縦断している。メンバーは7人。役者の一人まほさん(37)は「テント芝居の良いところは、そのまちに乗り込んで劇場(を借りた場合)の大きさや規制に関係なく自分たちのスタイルで回れること。まちの人たちとの触れ合いを肌で感じることが面白い」と話す。
午後7時半、狭い舞台の上にメンバー全員がひしめきながらの楽器の演奏で舞台はスタート。演目は「ただちに犬Deluxe」。舞台中央に横たわる「犬」をめぐって展開する芝居。舞台が進むにつれて舞台セットの飾りや柱、壁が取り払われていく。その度ごとに公園広場、大阪城、周りのOBPのビル、夜空、月といった具合に背景がオープンになっていく。役者たちはついに広場に飛び出して演じるため、大阪城公園全体が舞台となる。普段見慣れた風景の中で独特の芝居が演じられるのが「どくんご」芝居の大きな特長だ。
京都から来た30代の男性は「衝撃的。自分の想像力を超えることができた」と感嘆した様子。大阪市の30代女性は「きちきちした物語ではなく、見る人が自分の好みで、好きなように見られるところがいい」と満足そうな表情をみせた。
テント芝居を取り巻く環境は年々厳しくなっている。場所の確保が大きな課題だという。そこで不可欠なのは地元の受け入れ体制。大阪では、「未知座小劇場」の曼珠沙華さんを中心に芝居仲間たちが受け入れ体制を整え場所の確保から広報活動を行った。「今の時代に長期のテント芝居を実現できるのはすごいこと。芝居仲間として大きな刺激になる」(曼珠沙華さん)。「どくんご」のメンバーたちは公演の合間にさまざまな仕事をしてお金をためているという。1983(昭和58)年の創立以来培った芸力と人脈と劇団員たちの変わらぬ情熱が、不可能と思える長期のテント芝居を実現させている。まほさんは「多くの人に支えられて旅ができる幸せをいつも感じている。芝居だけで生活していけるようになることが大きな目標」と今後の意気込みを語る。
人と人とのつながりをたどり、劇団「どくんご」は旅を続けていく。10月17日は香川県丸亀市、23日、24日は愛媛県今治市と移動し、その後九州へ渡る。スケジュールの詳細は劇団ホームページで確認できる。