「女にしか作れない映画を作る!」-信念で叶えた女性監督が講演

人を惹きつける浜野さんのトークに、会場は一体の空気となった

人を惹きつける浜野さんのトークに、会場は一体の空気となった

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 大阪府立総合女性センター(ドーンセンター、大阪市中央区大手前1、TEL 06-6910-8615)で3月15日、「女性と仕事 part50 映画監督の仕事」のライブセミナーが行われた。

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 同センターではこれまでも、さまざまな仕事のジャンルで活躍する女性講師を招き、女性による女性のためのセミナーを行ってきた。

 50回目となる今回の講師は、映画製作などを手がける「旦々舎」(東京都世田谷区)の浜野佐知社長(60)。浜野さんは、現役の映画監督として活躍している女性で、会場には映画監督志望の参加者など約30人が集まった。

 浜野さんは、女性が映画監督になることが不可能であった時代に、「絶対に映画監督になる」という信念ひとつで、さまざまな困難の壁を突破してきた。当時、映画界の5社といわれた大手の映画会社(東映、東宝、松竹、大映、日活)は、採用条件がみな「大卒・男性」であったという。そこで、「高卒・女性」である浜野さんは、唯一規制の緩かった「ピンク映画界」に堂々参入。数々のイジメや差別と戦いながらも、22歳にして念願の映画監督となった。以後、浜野さんが監督した作品数は300本を超える。

 「男だらけの現場の中で、女ひとりでやっていくには相当な苦労があった。撮影現場はセクハラの嵐で、包丁を抱いて寝てましたからね。そう言えば、真冬の山中でのロケで高熱を出したとき、『だから女はダメなんだ』という言葉を言われたくなくて、雪降る深夜にひとりで歩いて山を降り、町の病院に駆け込んで『死んでもいいから明日の朝までに熱が下がる注射をしてほしい』と頼んで、医者にあきれられたこともありましたね」(浜野さん)と、当時を振り返り明るく笑い飛ばす。「とにかく、何が何でも監督になる!という強い信念だけが支えだった」(同)という言葉に、会場の参加者たちは心打たれた様子だった。

 ピンク映画界で長年監督を務めた浜野さんは、50歳で初の一般映画監督となる。一般映画1作目となる1998年「第七官界彷徨・尾崎翠を探して」では、忘れ去られていた奇才作家「尾崎翠」の世界を真摯(しんし)に見据え、見事なまでに映像上に表現し尽くした。2001年には、それまでタブーとされていた「高齢女性の性」をテーマに「百合祭」を発表し、第9回トリノ国際女性映画際で準グランプリ、ミックスブラジル国際映画祭でグランプリを受賞。2006年には尾崎翠原作「こほろぎ嬢」を完成させた。

 浜野作品の全映画は、「女性の側から性を主体的に見る」が一貫したテーマとなっている。「ピンク映画にしても何にしても、男目線でしかないものには憤りと不自然さを感じる。強姦された女がものの2分であえぎ出すなんてあり得ないでしょ。女の性を勘違いするなと言ってやりたい。私は、ちゃんと女の性に真正面から向き合って、女にしか作れない女のための映画を今後も撮り続けたい」(同)と、還暦を迎えてもなお、さらなるエネルギーを燃やし続ける。

 会場となったドーンセンターは現在、「橋下大阪府知事の推し進める公共施設の見直しにより、4月以降のスケジュールが白紙状態」(大阪府立女性総合センター 企画推進グループアシスタントチーフの仁科さん)にあるという。先月2月24日には、橋下大阪府知事による視察も行われたが、「今後、このドーンセンターがどうなるのか心配。民営化の危機に直面しているが、私たちはどうしてもこの施設を維持継続していきたい」(同)と切願する。視察の際、偶然同施設で「こほろぎ嬢」の上映会を行っていたという浜野さんも「なんとしてでもこのドーンセンターを守りたい」と思いを込めた。

ドーンセンター旦々舎HP(浜野佐知さんの会社)

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