廃業した銭湯「生駒湯」(大阪市都島区毛馬町4)で3月26日・27日、おおさかカンヴァスプロジェクトに参加している作家・白石晃一さんのインスタレーション作品「群集浴場プロジェクト」が行われた。
当日晴れるようにと子どもたちが作った「てるてる坊主」も銭湯内に飾られた
同プロジェクトは大阪の街全体をカンバスに見立て、府内の公共空間にアート作品を展示公開する「おおさかカンヴァス推進事業」によるもので、公募によって選ばれた23作品の中の一つ。今は使われていない銭湯の煙突の上に人工的に雨を降らせ虹を架けるため、参加者らが協働で浴場内に設置された手動式のポンプを使い、虹の元となる水分を外の噴霧装置に供給し虹を作り出すという参加型の作品。
白石さんの最近の作品の多くは虹の要素を取り入れているが、大きな虹を見た時に感じた気分の高揚がきっかけだという。「いろいろな人が関わっていくことで予想しないことが起きる。それをプラスに楽しんでいる」と白石さん。作品の展示だけではなく制作過程も共有したいという思いから、制作現場の「生駒湯」を開放し誰でも見られるようにした。
これまでさまざまな装置のトラブルや、当初予定していた銭湯が今年1月末に急きょキャンセルとなるなど多くのトラブルに見舞われたが、いろいろな人との出会いもあったという。5年ほど前に廃業した「生駒湯」を営んでいた女性は「人が集まる場所になればいいから」と快く場所を提供してくれた。京都造形大の生徒らはのれんをデザインし 、友人が手ぬぐいを作ったほか、近所に住む小学生の濱田彩美ちゃん、佐保綾駿(あやとし)くん、寿美みのりちゃんはポスティングやビラ配りを手伝い、当日晴れるようにと「てるてる坊主」や「ポスター」を作成した。
初日は機械のトラブルの影響もあってか虹は架からなかったが、2日目には皆が集まって空を見上げる中、生駒湯の上空に虹が発生。おおさかカンヴァス推進事業ディレクターの古谷晃一郎さんは「大人も子どももみんなで同じ空を見上げている風景が印象に残っている」と振り返った。