片町のバー「owl」(大阪府大阪市都島区片町2)が1月15日に5周年を迎え、翌日16日の最終営業日をもって閉店した。
同店オーナーの中野輝明さん(37)は、30歳で脱サラし飲食業界入り。人に接するのがとにかく好きな中野さんが、「エンドユーザーに接する仕事がしたい」「一番ストレートにお客さんに喜ばれる仕事がしたい」と考えた結果の転職だった。
決意を固めた中野さんが最初に勤務したのは、今はなき京橋のバー「グーフィー」。中野さんにとって師匠となるオーナーの林さんの協力と信頼を得て、「基礎もなにもわからなかった自分がそこで勉強させてもらった」(中野さん)思い入れの深いバーだと話す。
「グーフィー」で勤務後、約1年にして同店「owl」を2004年にオープン。繁華街のはずれでひっそりとしたバーがやりたいと、当時まだ飲食店が少なかった片町に店を構えた。
「バーというのは『人』を売る商売」を信条にしてきた中野さんは、こまめに客にお礼メールを送るなど、何よりも「誠実な接客」を心がけてきた。そんな中野さんの人柄に惹かれた常連客らは、口々に「どうやって次の店を探そうか」と今回の閉店を惜しんでいる。閉店数日前からは、営業開始から続々と客が現れ、5年間の思い出話に花を咲かせた。
閉店理由は「いろいろあるが、バランスの問題。家族のこと、体力のことなどいろんな要因があるが、自分が考えるベストな接客ができなくなったらダメ」。閉店を惜しむ客らに対しては、「ただただ感謝。支えてくれる人たちの気持ちだけでここまでやってこれた」と心を込める。
地元が京橋で、物心ついた頃から京橋で遊んでいたという中野さん。「僕にとって京橋という街は世の中に出て行く入り口みたいなもの。はじめてカツアゲされたんも京橋、はじめてぼったくられたんも京橋(笑)。特殊性のある街ではなく、当たり前にある街。今後は店側ではなく客の立場となって京橋と関わっていきたい」(同)とも。