JR京橋駅南口に程近い居酒屋「〇儲家(まるもうけ)」が、6月1日に新型コロナによる休業から再開して1カ月がたった。
店の壁一面には大小さまざまな紙に書かれたメニューが張り巡らされている。柱の側面に張られて見えないものも合わせると約300品目。店主・山村わたるさん(54)が23歳から独学で料理を学び増やしてきた。共に店に立つ母・八重子さん(79)は「息子に無理やり会社を辞めさせて厨房(ちゅうぼう)を任せた」と笑う。
1989(平成元)年に開業した同店。当初は訪れる人もまばらだったが、翌年3月、京橋南歩道橋ができると大阪ビジネスパークの北東部にある会社、読売テレビ(2019年大阪城ホール向かいに移転)、東京海上日動、富士通、KDDIなどの関係者が多く利用するようになった。八重子さんは「転勤で大阪を離れたお客さんが出張で大阪に戻るたびに訪れてくれたり、再び転勤で大阪に戻って来て新たな同僚を誘ってくれたり、離れては戻ってくるお客さんに支えられてきた」と言う。
緊急事態宣言を受け4月9日から休業。5月に入り、廃業も検討していた頃、八重子さんのラインに「辞めないでほしい」「頑張ってください」とメッセージが次々に入るようになった。休業中、店のシャッターに今年1月から始めたラインのQRコードを貼っていたという。「ただただうれしくて。とにかくやれるところまでやってみようと思った」と八重子さん。わたるさんは「30年やってきて初めて、この仕事を続けて良かったと思った」と語る。
再開して1カ月。「離れては戻ってくる」常連客が日々入れ替わり訪れ、休業前とほぼ同じくらいの客足になっているという。わたるさんは「今は休んでいた反動で増えていると思うが、今後はどうなっていくかは分からない」。八重子さんは「あと1、2年やってみて、店を畳んだら、息子も好きなことが思う存分できると思う」と話す。
営業時間は18時~24時ごろまで。土曜・日曜・祝日定休。