大阪歴史博物館(大阪市中央区大手前4)で6階特集展示室で現在、特別展「ニャンダフル浮世絵ねこの世界展」が開催されている。
浮世絵で描かれた猫の作品153点を7つのブロックに分けて展示。無類の猫好きである浮世絵師・歌川国芳(くによし)らの個性的な作風とともに、人々が猫とどのように関わってきたのか、人が猫にどのようなイメージを持っていたのかを紹介する。学芸員の安岡早穂さんは「猫は江戸・明治の人々も魅了してきた。かわいい猫から不気味な猫まで、さまざまな猫の姿を見てほしい」と話す。
猫と日本人の関係は、一説によると奈良時代に仏教の経典を食い荒らすネズミ退治のために中国から輸入した時に始まったとされている。江戸時代では米を食べてしまうネズミを退治するため猫が活躍し、ネズミよけの浮世絵としても描かれた。詞書(ことばがき)には「この絵を貼るとネズミも恐れをなして次第にいなくなる」と書かれている。
一方「源氏物語」で猫はペットとして登場する。「見立女三宮(みたておんなさんのみや)」は江戸時代の遊女と飼い猫を「源氏物語」の登場人物に見立てて描かれている。平安時代の猫はひもでつながれていたことが絵から見て取れる。人間の世界に入り込んだ猫たちは、浮世絵の中で美人や子どもと共に描かれた。絵の中での猫は添え物的な扱いが多かったが、歌川国芳によって主役的な存在として描かれた。
かわいいという反面、不気味な一面も持つ猫。夜中に活動し足音もなく現れ、死ぬ時には人に見られないようどこかへ姿を消すといった猫の姿に、江戸時代の人たちは薄気味悪さを感じ、いくつもの「化け猫物語」が誕生した。「五拾三次之内猫之怪(ごじゅうさんつぎのうちねこのかい)」では9匹の猫が組み重なって巨大な化け猫を描いている。
安岡さんは「当時の人々の猫の見方と現代をシンクロさせて見ることで、猫とどう付き合っていくのかということにも目を向けるきっかけになれば」と語る。
開館時間は9時30分~17時(会期中の金曜日は20時まで、入館は閉館の30分前まで)。火曜休館(8月13日は開館)。料金は、特別展のみ=大人800円、高大生600円、常設展との共通券=大人1,320円、高大生940円。中学生以下、障がい者手帳持参者(介護者1人含む)は無料。9月8日まで。