都島区人権啓発推進協議会は5月10日、都島区民センター(大阪市都島区中野町2、TEL 06-6352-6100)で、河野義行さんによる講演「松本サリン事件からの教訓」を開催した。5月1~7日の憲法週間にちなみ、「基本的人権の尊重」を訴えるのが目的。
河野さんは1994年、自宅で「松本サリン事件」に遭遇し、自身も被害を受けて入院中に、長野県警の家宅捜索を受け、マスコミからも容疑者扱いをされた経歴を持つ。同講演は、その時に受けた取り調べや、家族のつながりなどの実体験を中心に1時間半にわたって行われた。
「友人たちはマスコミに、私の写真を売ってほしいとさんざん頼まれたという。時には70万円でとも言われたとか。それを、『犯人じゃないから』と断ってくれたおかげで、私の写真がマスコミに出回らずに済んだ。回りが信じてくれたから頑張れた」(河野さん)など、マスコミ報道では知りえなかった話に参加者は誰ひとり席を立つことなく最後まで静かに耳を傾けた。
同協議会事務局の担当者は「普段は女性や年配の方がほとんどだが、今回は30~40代の男性がいつもより多かったように思う。今回はJRや地下鉄構内にもポスターを掲示した効果もあり、大阪府外からの参加者もあった。どの最寄り駅からも10分以上かかるにもかかわらず、雨の中を大勢の参加者が集まってくれ、皆さんじっくりと話を聞いているようだった」と振り返った。
参加者からは、「報道の隙間を埋めてくれる」「今後の人生に役立つ」「信念を通した姿に感激」「より深く人権について考えさせられた」などの意見がアンケートで寄せられたという。
同担当者は「お帰りの際にスタッフに『良かった』と一声かけてくださる方も多く、アンケートに書いたことを河野さんに伝えてほしいとも言われた。閉会後のいすの片づけを手伝ってくださる方もいらして、講演を聞かれて温かい気持ちが残ったのだとうれしく思った」とも。
河野さんは現在、犯罪被害者支援のNPOリカバリー・サポートセンター理事、第二東京弁護士会市民会議委員として「報道改革」や「犯罪被害者救済」などを訴え、全国で公演活動を行っている。