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「壁に巨大落書き?」と話題に 閉鎖した大阪の印刷工場でアートイベント 

壁面いっぱいに描かれたポートレート

壁面いっぱいに描かれたポートレート

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大阪・京橋の鶴身印刷第2工場(大阪市城東区新喜多1)で4月23日、アートイベント「the birthday」が開催される。

実行委員メンバー

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同社は、京橋で70年以上も印刷業を営んできた老舗印刷会社。創業者の鶴身精一さんは、NHKのドラマ「マッサン」のモデルとなった竹鶴政孝さんと深い交流があり、長年ニッカウイスキーのラベル印刷も請け負ってきた。

昨年、3代目社長が病に倒れ、印刷職人の高齢化などもあり廃業を決めた同社を、娘の鶴身知子さん(34)が廃業などの手続きのために継いだ。今後の建物の処分について悩み、以前から懇意にしていた規工川建設に相談したところ、今月初めに芸術計画事業部を立ち上げたばかりの同社から工場を会場にイベントを開くことを打診された。自身も造形美術家の同部長のキタノユキフデさん(27)は「初めて鶴身印刷を訪れた時、宝の山に見えた。建築業界では、古い建物は壊すのにも費用が掛かるし邪魔物扱いされるが、こういう場所にこそ一つ一つのモノに歴史があるということを見てもらえるような空間や場所作りをしたかった」と話す。工場は、今夏に解体される予定となっているが、その前に歴史ある工場内を再び活気であふれる空間にしようと展示やライブなどを鶴身さんと相談しながら企画した。

現在、イベントに向け工場外壁に巨大な壁画を用意。描き手はポートレートペインターの山本勇気さん(36)。山本さんは、建物などを立体的に描く建築パースを得意とし、建築パース国際大会で大賞を取るなどの実力の持ち主。近年、自画像などを描くポートレートペインターとしても活動する。今回は、壁一面に鶴身印刷の創業者、鶴身精一さんやマッサンの似顔絵を描く。工場の前を通り掛かる人は皆興味津々の様子。近所に住む70代の女性は、壁に絵を描き始めたのを見て、「また落書きか?と思って、描いてる人に許可もらってるの?って聞いたら、うんって。それなら、あんたがサボらんように見とくわ」と声を掛けたと笑う。「工場が廃業になって寂しいが、こうやって人が戻ってきてくれるのはうれしい」と、その後も毎日絵の進み具合を楽しみにしながら通っているという。

イベントは昼と夜の2部制。昼の部では、もの作りの楽しさに触れてもらおうと、勤続57年の工場長による石版印刷や切り絵などが体験できるワークショップを行う(500円~1,000円)。夜の部では、工場内の特設ステージで、「終わり」と「始まり」をテーマにアーティストたちによる音楽・演劇・ライブペイント・ファイヤーパフォーマンスなどを予定。ドリンクバーやキッチンカーによるフードコートも設ける。

展示では、関西在住の12組のアーティストによる工場の資材を使ったアート作品を展示するほか、鶴身印刷の歴史や印刷物などを紹介する「鶴身印刷博物館」を開設。鶴身さんは「最初は建物を提供するだけのつもりだったのに、今こうして展示の準備をしている」と笑顔で話す。「一日限りのイベントだが、70年の歴史を感じながらぜひ楽しんでほしい」と来場を呼び掛ける。

開催時間は11時~21時。料金は、昼の部(11時~16時)=無料、夜の部(17時~21時)=2,500円(前売り2,000円)。

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