大阪城向かいに立つ追手門学院小学校(大阪市中央区大手前1)で7月28日、日本代表選手による「フィンスイミング」教室が開かれた。
「フィン」と呼ばれる足ひれをつけることによって、より早いスピードを得られる「フィンスイミング」。競泳自由形50メートルの世界記録は20秒91という中、同泳法では14秒台で泳ぐこともできるという。当日は同校3年生から6年生までの希望者100人の児童が、午前・午後と2回開かれた教室に分かれて参加した。用意されたフィンをつけて泳いだ子どもたちは「進むのがすごく速くてびっくりした」「自分がこんなに早く泳げるなんて」と口をそろえた。
同教室の話が持ち上がったのは昨年8月。同校教員の野村圭吾さん(23)がフィンスイミング日本代表の谷川哲朗選手(27)に、勤務先の児童たちにフィンスイミングを教えてもらえないかと相談した。野村さんと谷川選手は大阪教育大学時代の先輩と後輩の仲。野村さんは、毎年夏に6年生が3キロメートルの遠泳を行うなど水泳を通した教育に力を入れている同校の児童に「フィンをつけて泳ぐことで、体を浮かして早く泳ぐ感覚を身につけてもらえたら」と思い、先輩に依頼したという。
一方、「フィンスイミングの普及に役に立てれば」と後輩の申し出に前向きに応えようとした谷川選手だったが、実現への道のりは険しかった。フィンスイミングは日本ではまだまだ普及しておらず、子ども用のフィンはなかなか手に入らない。谷川選手は協賛してもらえるメーカーを探し、ようやく今春になってめどがついた。その後も参加する子どもたちの足にあったサイズをそろえるなど細かい確認作業が続いた。競技仲間にも呼び掛け、7人の選手がスタッフとして集まりこの日を迎えた。
同教室のメーンイベントとなる日本代表選手によるデモンストレーションには、谷川選手のほか、長谷川雄太選手、山階早姫選手、有路有紀選手の3人が参加。選手たちがフィンを使ったさまざまな泳法を披露すると、会場は感嘆と称賛の声でどよめいた。その様子を見ていた杉田圭一教頭は「子どもたちは本物のすごさを敏感に感じている。第一人者と直接触れ合えることは子どもたちにとってかけがえのない体験」と目を細めた。
最後に各学年の代表と日本代表選手による100メートルのリレー対決が行われた。子どもたちから10秒遅れてスタートした日本代表チーム。その差はなかなか縮まらない。初めてフィンをつけた子どもでもすぐにスピードが格段に上がるのがフィンスイミングの魅力だという。結局日本代表チームは猛追するものの、最後まで5・6年生チームに追いつくことはできなかった。谷川選手は「皆さんに日本代表の座を譲らなくては。アジア選手権でベトナムに行く準備をしてください」と会場の笑いを誘った。
教室が終わり、子どもたちは「選手の体がすごい。胸がごっついのにおなかが細い」(5年生男子)、「フィンを付けてこんなに早く泳げてびっくり。またやりたい」(4年生女子)などとと話した。
谷川選手たちは「今回のノウハウを生かしてこうした教室を続けていきたい」と子ども用フィンを手に会場を後にした。
教室の問い合わせは、谷川選手のホームページから。