大阪歴史博物館（大阪市中央区大手前4）で3月4日、「おおさかシネマフェスティバル2012」が開催された。

故・森田芳光監督について語る映画プロデューサー白倉伸一郎さん

　「第7回 大阪アジアン映画祭」のプレイベントとして開催された同フェスは、1976（昭和51）年から開催されてきた「おおさか映画祭」が前身で、大阪の映画ファンの間で毎年恒例のイベントとして浸透しつつある。前売り券が早々に完売となり満席となった会場で「ベストテン発表＆表彰式」が行われ、浅丘ルリ子さん、片岡愛之助さん、豊川悦司さんら各賞の受賞者が登壇、受賞作品も上映された。

　当日は、今月24日から一般公開される「僕達急行 A列車で行こう」の上映で幕を開けた。同作品は、昨年12月20日に61歳の若さで惜しまれつつこの世を去った故・森田芳光監督が何十年も前から構想を温めてきた遺作。今回、同監督に特別賞が授与され記念上映されることになった。

　上映に先立ち、プロデューサー・白倉伸一郎さんは、森田監督から企画を持ち込まれた時のエピソードを語った。白倉さんは打ち合わせの場所としてあえて電車がよく見える店をセッティングしたが、森田監督は「電車好き」であることをおくびにも出さずに企画の説明を続けた。しかし仕事の話が終わるや否や、自分がいかに鉄道好きでこの映画を実現することが長年の夢だったかを語り始め、「大きくなったら鉄道会社の社長になりたかった」ことを元気に語っていたという。

　松山ケンイチさん、瑛太さんと鉄道好きの役者をそろえ、2010年秋に制作。鉄道好きも千差万別、楽しみ方の違いがあることを巧みに表現した同作品を「森田監督の生命力あふれた映画。遺作になってしまったが明るく笑顔で見ていただけたら」と白倉さん。

　午後は、今年のベストテン第1位に選ばれた「大鹿村騒動記」（阪本順治監督）の受賞記念上映が行われた。主演は昨年逝去した原田芳雄さん。映画ファンに夢を与え続けた巨塔たちをしのぶ上映が続いた。

　「第7回 大阪アジアン映画祭」の開催は3月9日～18日。詳細はホームページで確認できる。