記事のネタ探しのため、街歩きをしていた京橋経済新聞記者は9月10日、大阪城付近で一風変わった人物を発見した。
男性の名前はマサーヤンさん(38)。交通機関や宿泊施設などまったく使わず、東京から沖縄までリヤカーを引いてCD販売をしているのだという。7月7日に東京・新宿都庁前をスタートし、神奈川、静岡、名古屋、岐阜、京都と約2カ月かけて下り、大阪・京橋エリアに足を踏み込んだところを記者がキャッチした。リヤカーでのCD行商の旅は今回が初めてだという。
「一人ひとりのお客さんの顔を見てCDを手渡したいと思った」と、今回のリヤカー旅を思いついたというマサーヤンさん。マサーヤンさんの自宅は東京・渋谷。平日はソロ・ミュージシャンとして路上や駅前で歌い、週末には埼玉に出向いて農作業をしていたという。「自給自足の大切さを伝えたい」「暮らしの中に『農』を取り入れてほしい」と農業への熱い思いを、音楽を通して表現している。リヤカー旅の途中で出会った客には必ず米の種も渡す。種は1万2,000個を目標に配るという。
リヤカーでのCD行商旅の日々を「過酷なこともたくさんある」と笑うマサーヤンさん。梅雨時にはゲリラ豪雨も多く、雨をしのげる場所に困り果て、公衆トイレで便器を間近に寝たこともあったとも。また、公園でテントを張って寝ていて朝目覚めたら、元ホームレスで現在生活保護を受けているという中年男性(この男性は夜中に突然テントを訪問し、『CDを購入してやれないのが悔しい』といって帰ったという)からの缶ビールと菓子類と「マサヤン、がばれ!」と名前も文字も間違いだらけの励ましの手紙が置いてあり、「思わずホロリときて泣けた」というエピソードも。
マサーヤンさんはこの後、尼崎、神戸、岡山、広島、山口、福岡、大分、宮崎、沖縄と南下していくという。現在は大阪・梅田を通過中(9月11日15時)。沖縄到着までの期間は「今年いっぱいを想定している」(同)。
―「自分の手で農業や命への思いを込めたCDを渡したい」。マサーヤンさんはその思いを胸に、今日もリヤカーを引き、旅を続ける。